※俺はポストカードのために週1で見に行ってます

この「映画けいおん!」の感想と考察に入る前に少し。
俺という人間は基本的に一度好きになったものに対してはとことん甘い。
最近でこそあるコンテンツを切り捨てた(前の記事参照)ものの、あれは人生史上最悪の事件ともいうべきレアケースであるし、あれほどの事件を経ても2か月は「様子見期間」を設けたくらい。それくらい甘い。
だから俺が好きなものに対する感想を書くときは基本的にベタ褒めだ。
別にそれは悪いことじゃないと思っているけど、今回ついにその弊害が現れてしまった。
この「映画けいおん!」、とにかくすごすぎる。ここまでやってくれるとは思わなかった。
そこらの「好きな作品」の何倍も称賛、礼賛、大絶賛したい。そうしないとこの作品に対しては失礼だ。
しかしいつも可能な限りの称賛をしているので「それ以上」が表現できない。
そこをどうにか表現したいと思っていろいろ感想の構想を練っていたんだけど、どう書いてもうまくいかない。
で、どうしたかというと、もう吹っ切れた。
これだけ感動しているんだから、心が思うままに文章を書けばきっとその気持ちも表現できると信じることにした。

不思議なことに、感覚としては「この映画で『けいおん!』という作品が好きになった」という感覚もあって。
もともと歌もののCDはほぼ全部買うくらい好きだったにも関わらずこんな感覚になるものだから不思議。
それくらい、改めて「けいおん!」に惚れ直した。
本当に「けいおん!」の魅力がすべて詰まっていて、この映画を鑑賞することで、テレビ版「けいおん!」がどういう作品だったのか、ということを演繹的に見つめなおすことが出来るという感じ。
この映画は「けいおん!」のすべてだ、という事実は、1期1話の再現(朝のシーン)から始まり、2期24話(天使にふれたよ!)に着地するという構造にも表れているように思う。

この映画、1回目と2回目、2回目と3回目で見えるものがほんとに全然違うのね。これはびっくりする。
1回目の時点でもとりあえず最低限の部分は理解できるけど、複数回見て深く考えていくとそれとは全く違った物語が浮かび上がってくる。
1回目は純粋に何も考えずに見る、2回目はもう少し深く物語を追う、3回目は演出に気を付けて見るという風に具体的に目標を決めて見たからかもしれない。
4回目はどんな視点で見たらいいのか…いろいろ考えた今の状態でまた純粋に何も考えずに見るとか?
とにかくみんなリピートしたらいいと思う。マジで。ポストカードとかフィルムとか抜きにリピートする価値あるよ。
俺もポストカードの分だけ見ると言いつつ、結局もっと見るんじゃないかという気がする。

・まず前提として
この映画を全体を貫く軸は「4人と梓との距離感(わだかまり)」だと思う。この映画は梓とのわだかまりが解消される映画なのだ。といってもその観点に気付いたのは2回目の鑑賞で、1回見た程度ではなにもわかっていないということを痛感させられた。
これがわかってるのとわかってないのとでは本当に全然違う。
梓への隠し事や唯の百合疑惑としてわかりやすく象徴されているけど、そのわだかまりは本質的には当然「卒業する4人と取り残される梓」という厳然たるライン。
梓が3度見た夢を見てもわかるように、そのわだかまりはロンドン旅行の間にはついに解消されなかった。
しかし「卒業するんだからいつもと違わないといけない」(梓との間にラインを引く考え)がロンドン旅行を通して「いつもの私たちでいいんだよ」(梓も仲間の一人という考え)に変わり。
故にそのわだかまりは教室ライブ「U&I」で唯と梓が見つめあった部分(思いを歌に込めたから、が次の展開につながっていてまた芸コマ)で解消され、
その後の「天使にふれたよ!」において「卒業は終わりじゃない これからも仲間だから」という完全な形に昇華される。
本当に美しい流れだよ。

・最初の茶番
いつもと違う「K-ON!」のロゴが挿入される。
梓が部室に入ってくると唯たちはDEATH DEVILの曲を「演奏」していて、音楽性の違いによって対立している。
ところがその「演奏」は実はただのテープ音源だったし、音楽性の違いも「音楽性の違いごっこ」でしかなかった。
この流れ自体はいつもの放課後ティータイムのおふざけで安心感があるけど、今回はそれだけでない、それ以上の意味があったと思う。
もともとロンドンへの卒業旅行という内容、そして何より映画であるという事実そのものが「いつもと違うけいおん!」をファンに期待させてしまっているはず。
そこに最初にこの寸劇を挿入することで「放課後ティータイムは映画になっても変わらない」「メンバー間の対立なんて話をやる作品ではない」ということを宣言しているのだと思う。
そのあとOP曲「いちばんいっぱい」と本物の「けいおん!」ロゴ。
「ああ、いつもの『けいおん!』が帰ってきた」というこの感覚がもう画面と音響全体から伝わってくる!

・過去に行く
卒業旅行とはなんだったのか。テーマ的な話をすれば当然「いつもの自分たち」を再発見するプロセスではあったけど、もっと単純な話をすれば「卒業前の最後の思い出作り」だ。
本来そのままだと特別なイベントもなく卒業を迎えるはずのところ、卒業旅行に行くことで(梓との)思い出を一つ挟むことが出来た。
それが唯も度々口にした「過去に行く」ということなんだと思う。
それはロンドン観光中に登場した逆回転の時計にも象徴されている。今、少しだけ唯たちの時計の針を巻き戻してるんだよ、と。

・「Which one?」
あんまり目立つシーンじゃないけど、これ実はものすごいシーンなんじゃないかって。
「Which one?」というタクシー運転手のセリフについて、紬がこれを誤訳してみんなに伝えてしまう。結果的にはこれが勘違いを生んでドタバタするわけだけど。
リスニングの能力があって、実際聞き取りに活躍している澪がいつつどうしてこうなったのか。
澪が「Which one?」が「どこにあるの?」の意でないことに気付かないはずはなく、「紬が自信満々に誤訳を伝えるので、自分の解釈に自信が持てなくて言い出せなかった」のでしょう。
だからこそその後の(最初に訪れた方の)ホテルアイビスで紬が翻訳に詰まると、そこでやっと、おどおどと正しい訳を伝えると。
「Which one?」のシーンで澪は特に反応していないけれど、澪を動かさずとも澪のキャラクター性をもさりげなくかつ見事に表現している。
こういう細やかさが「けいおん!」という作品の魅力なんじゃないかと思う。仕草、行動、全てが超細かい。こういう細かいところに制作側のキャラに対する理解と愛情が宿るんじゃないかと。

・教室ライブ
鉄板の感動シーン。桜高の一部としての桜高軽音部の物語のピーク。
HTTとクラスメイトとの関係性(密かに搬入されたロゼッタストーンに注目)。堀込先生、さわちゃん、HTTと3代続く関係性。
そして唯澪律紬と梓とのわだかまり解消。
これだけの要素が絡み合って爆発しているのだからそりゃあ泣けるというもの。
映画のベストシーンを挙げろと言われたら迷わずこれ。

・「天使にふれたよ!」関係
屋上ダッシュってベタすぎるし唐突だしで正直、素直に感動は出来なかった。
1回目は。
4人が屋上から空を見上げているときに梓も「同じ空見上げて」いる、という事実に気付いたのが2回目。気付いた時は本当に鳥肌。そして涙涙。
ベタはベタでもただのベタじゃないんだよ。
そして4人が部室に戻り、梓が入って来て。今度は放課後ティータイムとしての物語のピークである「天使にふれたよ!」演奏。
第2期24話と同じ場面を、今度は梓ではなく4人の視点から見る。
その後の「あんまりうまくないですね!」が窓の外からのカットになってて、その声も敢えて聞こえないようにしているというのもまたファン泣かせのにくい演出。
しかしこの感覚どこかで覚えがあるなあ…と考えてみると、アルバム「放課後ティータイム2」のDisk2もまさにこれと同じ作りであることに気が付いた。
あれはカセットの音源だから、録音が止まっている間のみんなの会話は当然収録されていない。
ところが本編を見ているとそこの部分も想像しながら聴くことができる。
「Which one?」への反応で澪を動かさずに澪を表現したのも結局同じで、この作品では「語らないで語る」という方法が確立されているように思う。

・「けいおん!」への思い入れ
「けいおん!」を知らない一見さんにも一応配慮はされているけど、結局のところこの作品に価値を与えるのは観客の「けいおん!」への思い入れなんだと思う。「けいおん!」が好きであればあるほどこの映画に感動できる。
とにかくキャラ付けがしっかりしているから、一見さんでも唯、澪、律、紬、梓がそれぞれどういう子であるかは「わかる」はず。
でもテレビ版を通して実際にみんなの高校生活を「体験」していると、わかるとか知ってるとかそういうのを超えたレベルでの感動が得られる。
考えてみたら「卒業」自体がそういうものじゃんっていう。
学校を卒業する時のあの感情って、日常のあんなことこんなことの積み重ねを思い出すからこそのものでしょ。
あんなこともあった、こんなこともあった、とファンにいちいち思い出させるような小ネタを大量に挟んでるのには多分そういう意図もある。
ああ聡の友達いたな、ラブクライシスいたな、パスポート取ったな、ロゼッタストーンあったな、…と。

・愛情
「けいおん!」は本当にいろんな人の愛情に満ちた作品だと思う。山田監督をはじめスタッフのみなさんの愛情を節々から感じる。
作品への愛情と、ファンへの愛情。どちらも決して忘れない。
キャラだって内容的に動かしにくい曽我部先輩以外はほぼ全キャラ出てると言ってもいい。
こんなに温かい作品に、第1期第1話で出会えて、かつそれからずっと好きでいられた。
こんな作品に出会えることなんて、あるいは二度とないかもしれない。
そんな幸運に感謝したい。
テレビ版の時点ではそこまでは思ってなかったけど、映画見てこの作品はマジで一生ものだと確信した。
深夜アニメの映画では普通ありえないレベルの数字を記録してるようで本当に嬉しい。
売り上げが全てとかそういう考えではないけど、心から大成功してほしい。こういう作品こそがヒットしなきゃいけない。そう思える素晴らしい映画だった。

・今気になっていること
3回目では演出に注目して見たので「飛行機雲」と「鳥」がやけに気になったんだけど…これは流石に映画館リピートじゃ俺には理解できないレベルだと思う。
というわけでここはBD待ちかなあ、と。
あ、この映画のBDはもちろん確実に買うよ!

そんな感じで。
4回目見てわかったこととかポストカード並べてみて気付いたこととかあればまた何か書くかも。
いやほんとに映像作品でこんなに感動したことって一度もなかったからもう…

コメント

蒼穹
2012年1月2日1:05

ポストカードwわかります、トークンですね?

nophoto
Kenelm
2012年2月15日0:16

Stellar work there everyone. I’ll keep on reidang.

スカルクランプ
2012年2月19日5:01

放置状態で申し訳ないです。

>蒼穹さん
いえもう純粋にけいおん!グッズとしてです。
このポストカードは素晴らしいものですよ。

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